探索行動時にもSWR

今週はすんごくラフでタフ。なんか気がついたら終わってた感じ…
そしてラボで椅子寝の頻度とビールの消費量がやばい。
ちったあ節制せねば。

と、そんなことはさておき
今日の論文はこちら。

Place-selective firing of CA1 pyramidal cells during sharp wave/ripple network patterns in exploratory behavior
O'Neill J, Senior T, Csicsvari J. Neuron. 2006

何が面白いのか

面白い点はずばり一点。
SWR(Sharp Wave Ripple)が、睡眠時やじっとしてる時だけでなく、行動中ににも見られる。
これに尽きる。

SWRはそもそもslow wave sleep中にしか見られないと思われていたのが
やがて覚醒時でもじっとしてる時にはあるらしい、という話になり
そしてこの論文では、じっとしてる必要すらないという
そもそもSWRって睡眠時に見られるって言ってたのは何だったのか、って感じの論文。


さらに、行動中のSWRでは、そこで発火する細胞に場所依存性があるとも言っている。


具体的に何を見たのか

見たものは単純で、四角いケージに入れて
動物の場所と海馬CA1の神経活動を記録してSWRを見た。

すると、探索行動時(普通はシータ波という10-15HzのLFPが見られる)に、
数秒だけシータ波が途切れて、そこにSWRが見られる。
(ごく稀に、シータ波にSWRが乗ることもあったらしい)
動物の走る速度は、SWR時に一時的に遅くはなった(でも止まってない?っぽい)。

探索中のSWRを、eSWRと呼ぶことにした。

eSWRの間の発火だけでplace mapを作ると
それがシータ波の見られる間(=普通の探索行動中)だけで作ったplace mapと似てる。
さらに、place fieldの内の方が外よりもeSWR中の発火頻度が高い、という
eSWR中の発火に場所依存性が見られ、それが行動時のと似てる事を示した。
ふつう、SWRでの発火は、場所依存性が無い(全く無いかというと微妙だが)ので、睡眠時なんかにも活動が見られるのだが
eSWRは勝手が違う、ということらしい。


また、ベースラインの発火頻度を横軸に
SWRのピークの発火頻度を縦軸にとってプロットすると
その傾きが1を超える、つまり
ベースの頻度とSWR由来分の頻度を足した以上に発火する。
しかし、これって、神経細胞の活動が閾値現象なんだということを考えれば当たり前では…?


あとは、受容野の似てる似てないで、eSWR中の発火の同期具合が変わるとか
その関係が行動後の睡眠中のSWRとeSWRで同じ傾向だとかといった
いわゆるSWRのリプレイ的な特徴がeSWRにもありますよ、と言っております。

気になる点

まず、何より気になるのは、「ホントにSWR?」ってトコ。
行動時にSWRが見られるんなら、何で今まで誰も気づかなかったのか。
そこが不思議。

たとえばslow wave oscillation(〜1Hzの非常にゆっくりしたLFPの振動)なんかだと、
これが発見されなかったのは、DCノイズを除去するために
低周波のシグナルをフィルタするのが当たり前だったから、という理由がある。

eSWR中の発火の場所選択性ってのも非常に気になる。
Gupta et al. 2010によると、じーっとしてる時のSWRは
その場所よりも、むしろ最近訪れていない場所のパターンを反映しやすいってなってたはず。
なんか上手く折り合いがつかないきがするんだが。


自分の仕事の興味と突き合わせると、ちょっと面白いこともあるんだけど
書くと長くなるので省略。