ギリギリを攻める文を書きたい

それはきっと、F1で1cmを攻めるコーナリングにも近いはず。

なんか久しぶりのblog。

ここんところ、申請書を書くのにかなりのエネルギーを割いてたので…
その申請書も提出先に着いたようなので、あとはお祈りするくらい、かな。

この申請書、日本語だったんだけど、
知ってる日本人の方に、読んでもらった。
色々とフィードバックを貰えて、おかげで、かなりブラッシュアップできた。
何より、全然、専門も経験も違う人達に読んでもらったのは
実際のところ、かなり勉強になった。

こういう書き物、いわゆるテクニカル・ライティングってやつは
たぶん、ある程度のトレーニングが必要なんだと思う。
しかもトレーニング次第で誰でもソコソコにはなると思う。(根拠はないが)

で、自分の場合、明らかにトレーニング不足。
こういうトレーニング、大学院にいた間にやっとくべきだったなぁ。
だって、アカデミアでは必須のサバイバルスキルだもんなぁ。

というわけで、以下、勉強させてもらったことを書いてみる。

一般→具体→一般

まず、ちょっと大きい話をする。
そこから具体例に入る。
最後にちょっと大きい話をして終わる。

最初に、全体の中の位置づけを示す。
それから具体的なプランを提示する。
最後に全体的な話に戻って、夢/展望を語る。

これが大事らしい。大きい話から入らないと
「なんか、みみっちい話してんなぁ」と聞こえるし
そもそも、何の話なのか分からなかったりする。

ここで気をつけるのは、一般と具体を行ったり来たりしないこと。
話が行きつ戻りつだと、何の話なのか伝わらない。
同じロジックでも、順番を入れ替えるだけでスッキリしたりする。


とにかく、文章のアタマで分からん、となると、続くセクションは絶望的。
どんなに丁寧に分かりやすく書いてあっても、たぶん分かって貰えない。
途中で迷子にならないようにナビゲートしないといけない。

結論から、テンポよく書く

大事なの話や結論は先に書く。
そして、1つ1つの文は短く、テンポよく。
この2つは、よく言われるポイントだ。

結論を先に書く。よく言われるけど、むずかしい。
しかも、これは文章全体はもちろん、段落の中でも、文でもそう。

文章にはまず、結論めいた段落を置く。
段落の一文目は、その段落の結論を端的に書く。
文は、何についてなのかを先に書く。

スケールは違っても、全部、結論を先に、という精神で共通してる。
俺の場合、この、文のなかの順番も結論を先に、って視点は今回、勉強させてもらった点だった。
なので、「この文の結論を先に」ってヤツの例をあげてみよう。

元の文
「彼は、女性の手にのみ執着し、ついにはそれを切り取ってしまう、という点で異常なのだ。」

なんとも、負けて死ね!な文ですな。
何の話なのか、最後までわからないし、文もダラダラ長い。

まずは、結論を先に持ってくると

「彼が異常である点は、女性の手にのみ執着し、ついにはそれを切り取ってしまうところだ。」

こうすると、彼が異常だ、って事を書いてるのだな、とすぐに分かる。

次に二点目。文を短く。
一つの文で、長々と句点でつなげると曖昧になりがち。
短くしたほうが、強く響く文になる。
基本は、長い文を分ける。

さっきの例だと、
「彼が異常である点は、女性の手にのみ執着し、ついにはそれを切り取ってしまうところだ。」

これをできるだけ簡潔に書こうとすると、例えば

「彼の異常さは、女性の手への執着である。彼は執着のあまり、女性の手を切り取るのだ。」

とかかな?
まず、彼は異常だ、と言い切り、何が異常なのか、で文を1つ完結する。
その後に、根拠となる事実を述べる。
結論から、という流れは買えずに、短く切って、論理を明確にしてる(きがしてる)

強調語は要注意

強調するための言葉は、できるだけ使わない。

書いてると、ついつい、「非常に」「とても」「基本的な」「根本的な」などなど、
強調するための言葉を使いがち(少なくとも、俺はそう)。

ところが、こういう語を使ってしまう所って、
実は詰められてない点であることも多い気がしてる。

例えば
「ボクは本質的に、途方もなく強いです。」

何やら大仰な文だけど、「本質的に」や「途方もなく」は強調するだけの言葉で、
省いても意味は変わらない。なので省いてみると、

「ボクは強いです。」

これ見せられたら
「だから何?」
「は?どう強いの?」
「なんで強いって言えるの?」
なんて思ってしまうはず。

たぶん、それを、無意識に感じてるから、修飾語をつけて誤魔化してるわけですね。

じゃあ、どうしたら良いか。
もっと具体的に書く。これしか無い。

そのために、どう強いのか、どうして強いのかを突き詰める。
すると、例えば、

「私の戦闘力は53万です。」

と、なるわけですね(笑)
さすがに文脈が無いと分からないですから、そこまで加味すると

「君たちの戦闘力は、突出した者でも4万2千です。それに対し、私の戦闘力は53万です。」

といった所でしょうか。

ここで面白いのは、より具体的に書いた文には「強い」という単語が出てこない点。
「強い」という単語を使わずに「確かに強い」と納得させている。

申請書や提案書で言うと
「重要」「大事」「重大」「大切」といった言葉を極力使わずに済ます。
この類の文章の中には、重要なことしか書いてないはずなので
その中で殊更に「重要」って言葉を使うってのは、一種の強調語、と言えるだろう。

というわけで、強調語を省く、これもポイント。

誰が読むのか、を意識する

読者像を明確にする。
それによって、何をどこまで説明するかが決まる。

たとえば、一部の人たちは
「左舷弾幕薄いぞ」
と聞いただけで、あぁ、
使いまわすからいつも左なんだよね、とか、色々と思い浮かぶ。

ところが、「弾幕?なにそれ」って人が想定されるならこの説明は不十分で、
「左舷、弾丸をもっと撃たないと突っ込んでくるミサイルなどを撃墜しきれないぞ」
とでもなるのかもしれない。

もちろん、噛み砕いで説明すればするほどいい、ってもんでもない。
弾幕って聞いただけで白目なしの老け顔艦長、とか出てくる人たち相手に
「戦艦の、おちゃわん持つ方の手の方、もっと鉄砲撃たないと、敵が突っ込んできて危ないぞ」
なんてやってたら、鬱陶しくて誰も見てくれないだろう。

だから、どんな相手が読むのかを意識しないといけない。
どんな相手か明確に意識しないと、
結局のところ、自分で後から読んで通じる程度になりがち。
あるいは、ものすごく基本的なことを延々と説明するとか。

だから、まずは読者像を明確にし、内容を整理する。
書くべき内容は、それを基準に選別する。

これ、口で言うのは簡単だけれど、やるのは難しいけどね。

色んな人に読んでもらう

ある程度できあがったら、他人に読んでもらう。
これが大事。
ただ、読んでもらうにしてもコツがある。
1つ目は「何を指摘して欲しいかをあらかじめ伝える」
2つ目は「2〜3人に読んでもらって改定して」を出来るだけ沢山くりかえす
3つ目は「フィードバックはできるだけ、直接会って貰う」

1つ目、何を指摘して欲しいかを予め伝える。
同じ読んでもらうにしても色々あるはずで、例えば

  • 誤字脱字が無いか
  • 論理に破綻や飛躍が無いか
  • 説明の過不足が無いか
  • 文章や語に曖昧さは無いか
  • より強く響く文に書き換えられないか

などが考えられる。

どのレベルを求めてるのかで、読んでくれる人の読み方も変わるだろうし
自ずとコメントも変わってくる。
ちなみに、貰って一番無駄な返事はズバリ、「えぇんちゃう?」

このコメント、何も変わらないので、お互い時間の無駄。
これを回避するには、無理矢理でもネガティブコメントをもらう。
書いたものを批判するのは書き手を批判するみたいに感じるかもしれないけれど、
そんな事はない、ということも合わせて伝えておくといいかもしれない。

これは私見だけれど、何であれ、
良いものを作るには、批判に晒されるステップが必要不可欠。
その批判を、なるほど、と思って取り入れるか、
いや違う、と突っぱねるかは自分の判断。
まず材料を出してもらうのが大事。


2つ目は少人数に読んでもらって改定、を繰り返す。

文には、みんなが共通して引っかかるポイント、ってのがある。
もちろん、読み手の経験や知識、意識によって変わる部分もあるけれど。

今回、色んな人に同じ版を読んでもらったんだけれど
その感触でいうと、3人に読んでもらえば
1人くらいはその共通ポイントに何かコメントしてくれる。

なので、手の空いてる人を探して、3人くらいに読んでもらう。
そんで、フィードバックを吟味して改定して、また繰り返す。
このサイクルを出来るだけ沢山やるべき。
そして、読んで貰う人も、同じ人に繰り返しよりは
違う人に読んでもらうほうがいいと思う。


3つ目は、できるだけ会って話す。
書き物の添削は、どーしても文字ベースになりがちだけれど
そもそもの情報量は会って話した方が多いのは当たり前。

読んでもらって分からなかった点なんかを
それはこういう意味なんですよ、とか説明するうちに
自分でも気付いてなかったポイントに気付いたりすることもある。
それに、書くほうが言うよりも遠慮しがちだし。

メールは確かに便利だし、
相手の時間をあんまり拘束しないし、気楽だけれど
face to faceに勝るものはやっぱりないんだねぇ。

と、いうわけで

大して文章が上手いわけでもない俺が
今回の経験を通して学んだこと、考えたことをまとめてみました。

特に今回は、話の筋が自分の中でちゃんと消化しきった上で書き始められたので
伝わるようにする、強く響くようする、そこに集中できて良かった。
というか、今までそういうのが無かったことが問題。

本当に、ウソでも大げさでもなく、
論旨の流れから単語の順番、
果ては句点の打ち方ひとつまで、考えに考えて詰めていくんだ
ってのを、肌で感じられたのが一番の収穫だったな。

と、同時に。もしこっちでやっていくなら、
このレベルのライティングを英語でやらなきゃならんのか、
と思うと、ちょっと落ち込んだのも事実。

言葉とはままならんものよ。